敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「……ユリア」

 エルフナルドは近付き、拘束されていたユリアの腕のロープを切った。
 泣きじゃくるユリアの背を、彼は静かに、そして優しく撫でる。

「も、申し訳……ありません……。悲しい……わけじゃ、なくて……。ごめんなさい……」

 そう謝るユリアを、エルフナルドは両手で包み込むように抱き寄せた。
 ユリアは、縋るようにエルフナルドにしがみつき、声を上げて泣いた。

 ――しばらくして。

 扉が勢いよく開く音と共に、カリルが部屋へ駆け込んできた。

「陛下!!」

 室内を見渡し、エルフナルドの姿を確認すると、カリルは大きく息を吐いた。

「……ご無事でしたか。お一人で先に行かれたので、心配しておりました。お怪我は……ないようですね。ユリア様は……?」

 その声に、ユリアは我に返り、ゆっくりとエルフナルドから離れた。

「も……申し訳ありません……。大丈夫です……」

 必死に涙を拭い、ユリアは、エルフナルドを見上げた。
 
「陛下……ありがとうございました」

 ユリアは、床に額がつくほど深く頭を下げた。
 そして、ゆっくりと顔を上げると、もう一度口を開いた。

「陛下……あの……もう一つ、お許しいただきたいことが……」

 そう言い終えると、ユリアは再び深く頭を下げ、返事を待たずに隣の部屋へと走り出した。
 突然の行動に、エルフナルドとカリルは顔を見合わせたが、すぐにユリアの後を追い、隣室へと向かった。
 部屋に入ると、セルビアが壁にもたれかかるように、ぐったりと座り込んでいた。

< 156 / 173 >

この作品をシェア

pagetop