敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「……セルビア……!」

 ユリアは駆け寄り、慌てて脈を取る。

「……良かった……まだ、息がある……。遅くなって……ごめんね……」

 かろうじて生きていることに安堵し、ユリアは静かにセルビアへ手をかざした。

 迷いは、もうなかった。
 ――この力は、守るために使う。
 
 力を込めると、切り裂かれていた傷口が、目に見えて塞がっていく。
 やがて、セルビアの瞼がゆっくりと開いた。

「……ユ、リア様……? ご無事……でしたか……」

 意識が戻ってすぐ、ユリアの身を案じるセルビアを見て、ユリアは思わず彼を抱きしめた。

「良かった……! 本当にごめんね……。ありがとう……私を助けに来てくれて……」

 セルビアの背に回されたユリアの手は、かすかに震えていた。

「……何をおっしゃっているんですか。私は、貴方をお守りできたことなんて、一度もなかった……。戦争の時も……貴方が嫁がれる時も……。何もできなかった……」
「そんなことないわ。いつも、私の側にいてくれた。それだけで……とても心強かったの」

 ユリアは、震える声で続けた。

「生きていてくれて……ありがとう。本当に……」

 セルビアは、今にも泣き出しそうな表情を浮かべた。

「……私こそ。貴方が生きていてくださって……良かった……」

 エルフナルドとカリルは、言葉を挟むことなく、静かにその様子を見守っていた。
 

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