敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 ユリアとエルフナルドは、近くの宿の一室にいた。
 体を休めるようにと、カリルが手配してくれた宿で、二人は同じ部屋へと通されていた。

「本当は一人部屋が良いかもしれないが、万が一のことがあっては困る。同室にした。許せ」

 エルフナルドは淡々と告げると、部屋の隅の椅子に腰を下ろした。

「そんな……! 一人部屋がいいだなんて、思っていません。今日は本当に、ありがとうございました……陛下……あの……」

 ユリアは対面の椅子に座り、不安を押し隠すようにエルフナルドを見つめた。

 ――……もう気付いているだろう。
 
 セルビアの傷を癒す場面を、エルフナルドは確かに見ていた。

 この力を、どう思われているのか。これから、自分はどうすればいいのか――。

 言葉に詰まるユリアを見て、エルフナルドが先に口を開いた。

「……話さずともよい。大体は分かっている」

 一瞬、視線を伏せてから、エルフナルドは真っ直ぐにユリアを見た。

「……お前は、何も気にせず、私のところにいればいい」

 どこか苦しそうで、それでも覚悟を帯びた眼差しだった。

 ユリアの目に、涙が滲む。

「…………ありがとうございます……」

 それだけを、かろうじて絞り出すと、ユリアは俯いた。

 次の瞬間、エルフナルドは立ち上がり、強くユリアを抱きしめた。
 その腕は、驚くほど温かかった。

「……へ、いか……。ごめんなさい……私……」
「よい。好きなだけ泣け」

 その言葉に堪えきれず、ユリアは声を上げて泣いた。
 やがて泣き疲れ、ユリアはエルフナルドの腕の中で眠りについた。
 エルフナルドは、腕の中の温もりを確かめるように、静かに息を吐いた。
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