敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
その夜、寝室でユリアは、改めてエルフナルドにセルビアのことについて礼を述べた。
「陛下……セルビアのこと、本当にありがとうございました」
「構わない」
短く答えるが、その声はどこか柔らかい。
「私は明日からルトアへ向かう。しばらく国を離れることになる。その前に、お前の側にあの者を付けておきたかった」
「あの……本当に、申し訳ありませんでした。私のせいで、ルトア国への訪問が遅れてしまって……」
「問題ないと言っているだろう。ユーハイムでの件は不測の事態だった。それに、アルジールとルトアは長年の付き合いがある。キャロル姫も理解してくれている。……もう気にするな」
「……はい」
ユリアは小さく頷き、俯いた。
「今回、お前を置いていくのも、あの件があったからだ。本当は、私の側に置くのが一番安心だが……まだ、遠出には抵抗があるだろう?」
気遣うような視線を向けられ、ユリアの胸がきゅっと締めつけられた。
「……そんなことは……ありません」
そう答えながらも、ユリア自身、心のどこかで嘘だと分かっていた。
あの出来事以来、国の外へ出ることに、わずかな恐怖を覚えてしまっている。
「お前は本当に分かりやすい」
エルフナルドは苦笑し、ユリアの額を軽く指で突いた。
「嘘をつくな。お前の表情を見れば、すぐに分かる。私を騙せるわけがないだろう」
「……」
「心配するな。二週間ほどで戻る。そのためにも、お前が少しでも安心できるように、セルビアを付けた。それだけだ」
そう言って、今度は優しくユリアの頭を撫でる。
「……私に、何か出来ることはございませんか?」
王妃でありながら、守られてばかりの自分が、どうしても歯がゆかった。
ほんの少しでも、エルフナルドの力になりたかった。
「……では」
エルフナルドは、ふっと口角を上げた。
「私のことを、名前で呼んでもらおうか」
「……え?」
思いがけない言葉に、ユリアは目を丸くした。
「セルビアのことは名前で呼ぶのに、私のことはいつまでも“陛下”か?」
「そ、それは……。陛下を名前でお呼びするなんて、できません!」
ユリアは慌てて首を横に振った。
「私のために、何かしたいのだろう?」
そう言われて、言葉に詰まる。
「……わ、分かりました。練習……してみます……」
一度深呼吸してから、意を決したように口を開く。
「……エ、エルフナルド様……」
顔を真っ赤にして絞り出したその呼び名に、エルフナルドは、ひどく満足そうに微笑んだ。
「陛下……セルビアのこと、本当にありがとうございました」
「構わない」
短く答えるが、その声はどこか柔らかい。
「私は明日からルトアへ向かう。しばらく国を離れることになる。その前に、お前の側にあの者を付けておきたかった」
「あの……本当に、申し訳ありませんでした。私のせいで、ルトア国への訪問が遅れてしまって……」
「問題ないと言っているだろう。ユーハイムでの件は不測の事態だった。それに、アルジールとルトアは長年の付き合いがある。キャロル姫も理解してくれている。……もう気にするな」
「……はい」
ユリアは小さく頷き、俯いた。
「今回、お前を置いていくのも、あの件があったからだ。本当は、私の側に置くのが一番安心だが……まだ、遠出には抵抗があるだろう?」
気遣うような視線を向けられ、ユリアの胸がきゅっと締めつけられた。
「……そんなことは……ありません」
そう答えながらも、ユリア自身、心のどこかで嘘だと分かっていた。
あの出来事以来、国の外へ出ることに、わずかな恐怖を覚えてしまっている。
「お前は本当に分かりやすい」
エルフナルドは苦笑し、ユリアの額を軽く指で突いた。
「嘘をつくな。お前の表情を見れば、すぐに分かる。私を騙せるわけがないだろう」
「……」
「心配するな。二週間ほどで戻る。そのためにも、お前が少しでも安心できるように、セルビアを付けた。それだけだ」
そう言って、今度は優しくユリアの頭を撫でる。
「……私に、何か出来ることはございませんか?」
王妃でありながら、守られてばかりの自分が、どうしても歯がゆかった。
ほんの少しでも、エルフナルドの力になりたかった。
「……では」
エルフナルドは、ふっと口角を上げた。
「私のことを、名前で呼んでもらおうか」
「……え?」
思いがけない言葉に、ユリアは目を丸くした。
「セルビアのことは名前で呼ぶのに、私のことはいつまでも“陛下”か?」
「そ、それは……。陛下を名前でお呼びするなんて、できません!」
ユリアは慌てて首を横に振った。
「私のために、何かしたいのだろう?」
そう言われて、言葉に詰まる。
「……わ、分かりました。練習……してみます……」
一度深呼吸してから、意を決したように口を開く。
「……エ、エルフナルド様……」
顔を真っ赤にして絞り出したその呼び名に、エルフナルドは、ひどく満足そうに微笑んだ。