敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「……どこから、その話を?」

 ユリアの胸が、ひやりと冷えた。
 自分が連れ去られた件については、巻き込まれた護衛を含め、エルフナルドが厳重に口止めをしていたはずだ。
 それを、なぜフレドリックが知っているのか。

「はは。ユリア様は嘘がお下手ですね。まあ……お元気そうで何よりです」

 再び笑みを浮かべたフレドリックの瞳は、しかし、少しも笑っていなかった。

「最近は、兄上とずいぶん仲がよろしいようですね。以前の舞踏会では、とてもそうは見えませんでしたから」

 探るような視線が、ユリアを捉える。

「仲が良いと聞いて、父上も大変喜んでいましたよ。孫の顔が見られる日も近いのではないかと……」

 ユリアは、思わず息を詰めた。

「エ、エルフナルド様は……もともと、お優しい方です。それに……お子は授かりものですから、何とも……」
「……そうですか」

 一瞬の沈黙の後、フレドリックはにこりと微笑んだ。

「楽しみにしていますよ。兄上と、ユリア様のお子を」

 その言葉を残し、ふっと真顔になると、フレドリックは踵を返した。
 ユリアの前から去っていく背中を見送りながら、胸の奥に言い知れぬ不安が広がっていく。

「ユリア様。大丈夫ですか? どのようなお話を?」

 セルビアがすぐに駆け寄り、心配そうに声をかけた。

「……別に、大した話ではないわ」

 そう答えながらも、ユリアの心は落ち着かなかった。

「今日は、もう部屋に戻るわ」

 ユリアはそう言うと、庭園を後にした。
 胸の奥に残るざわめきが、どうしても消えなかった。
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