敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 それから、十日ほどが過ぎた。
 エルフナルドがルトア国から帰還したとの知らせが届いた。
 知らせを受け、ユリアは王宮の門まで出迎えに出ていた。

「ユリア。出迎え感謝する。私の留守の間、変わったことはなかったか?」
「おかえりなさいませ、エルフナルド様。特に何事もなく、過ごさせていただきました」

 そう言って頭を下げるユリアを、エルフナルドはじっと見つめる。

「……そうか」

 そう答えながらも、エルフナルドの視線はわずかに鋭くなっていた。

 その後、エルフナルドはセルビアを執務室へ呼び出した。

「お呼びでしょうか、陛下」
「急に呼び出してすまない。私の留守中に、何があった?」

 まるで、何かがあったと確信しているかのような問いかけだった。

「……お気付きでしたか。ユリア様は、お顔に出やすい方ですから……」
「ああ」

 セルビアは、先日フレドリックがユリアを訪ねてきた件を詳しく報告した。
 話を聞き終えた瞬間、エルフナルドの顔が露骨に歪んだ。
 机の上で、無意識に指を強く組む。
 
「フレドリックが……ユリアに何の用だ」
「やはり、フレドリック様には何か……?」

 エルフナルドはしばらく沈黙し、それから重く口を開いた。

「……もう亡くなっているが、私達には兄がいた。兄と私は先王と王妃の子だ。だが、フレドリックは先王と妾の子だった」

 淡々とした口調の奥に、複雑な感情が滲む。

「第三王子と呼ばれてはいたが……あいつも、その母親も、ずっと疎まれてきた存在だった。そのせいか、フレドリックは食えぬところがある。私でも、何を考えているのか掴めない」

 エルフナルドは、頭を抱えるように俯いた。

「……そうでしたか。フレドリック様が訪ねて来られてから、ユリア様の様子がどこかおかしくて……。すぐにお話を伺おうとしたのですが、教えていただけず……申し訳ありません」
「……いや、いい」

 エルフナルドは顔を上げ、静かに言った。

「引き続き、ユリアを頼む」
「御意」

 セルビアは深く頭を下げ、執務室を後にした。
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