敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 ユリアは必死に首を振った。

「……もうお気付きでしょう。エルフナルド様の左肩の傷痕……あれは、私が治したものです。あの洞窟で……」

 声が震える。

「許可もなく、勝手に治しました。不完全な力だと分かっていたのに……必ず痕が残ることも。それなのに……エルフナルド様に、あんな大きな傷を……」

 視線を落としたまま、続けた。

「以前、書庫でエルフナルド様のその傷を見て……気付きました。あの時の青年が、エルフナルド様だったのだと……。その傷、今も時々痛むのでしょう?」
「……そうか」

 エルフナルドは静かに息を吐いた。

「やはり、あの時助けてくれたのはお前だったんだな。傷は……確かに、たまに痛む。だが、それがどうした?」

 力強く言い切る。

「お前が助けてくれなければ、私は死んでいた。今の私があるのは、お前のおかげだ。感謝こそすれ、責める理由などない。なのに……なぜ、そんな顔をする」
「……あの時の恩返しで、私を守ってくださっているのでは……お優しいから……同情して……」

 涙を滲ませ、訴える。

「私の想いが……そう見えると?」

 苛立ちを抑えきれない声だった。

「違います……違います……」

 涙が頬を伝う。

「最初は……それでもいいと思いました。エルフナルド様のお側にいられるなら、それで……。でも、それ以上を望んでしまう自分が……許せなくて」

 声を詰まらせる。

「この力は、自分で終わらせると誓ったのに……エルフナルド様とのお子が欲しいなんて……そんな浅ましいことを……」
 
 手が震える。胸が締め付けられる。

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