敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「ユリア……」

 エルフナルドは、一瞬言葉を失った。
 喉の奥に、言ってはならないものが引っかかる。

「私との子を望んでくれることの、何が悪い」

 エルフナルドは、そこで言葉を切った。
 一瞬、何かを飲み込むように視線を伏せる。

「……私も」

 小さく息を吐いてから、続ける。

「……お前との子が、欲しいと思ってしまった」
「やめて……」

 ユリアは首を振る。

「これ以上、私の心を乱さないでください……。そう言っていただけて幸せです。でも……だからこそ私は、お荷物でしかない……」
「荷物だなどと言うな」

 エルフナルドは、強くユリアを抱きしめた。

「私は、お前と共にありたい。他の誰でもない。ユリア、お前だ。覚悟が決まらないなら、子など作らなくていい。お前がいれば、それで……」

 その言葉は、ユリアの胸の奥へ静かに落ちていった。

「それに、子供のことはゆっくり考えればいい。すぐに作る必要なんてない。自分たちのペースで、時間をかけて考えていけばいいんだ」

 エルフナルドはそう言うと、ユリアの髪を優しく撫で、先程よりも強く抱きしめた。
 その温もりと優しさが、胸にじんわりと広がる。

 ――自分の覚悟が決まるまで。もう少しだけ、このままで……。
 
 声には出さず、静かに願った。
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