敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「あったわ……!」

 本を手に取り、ページをめくる。

「……やっぱり、文字は分からないわね……」

 何度か頁を繰ったものの、理解できるものはなく、ため息がこぼれた。
 最後のページをめくろうとした時、指先に違和感が走った。
 一枚だけ、明らかに分厚いページがある。

 端を爪で軽く引っ掻くと、二枚の紙が貼り合わされていることに気付いた。

「……?」

 おそるおそる剥がすと、その間から小さな紙片が落ちた。
 少しくすんだ、古いメモだった。
 ユリアは、その紙片を広げた。
 そこに書かれていた文字を見て、ユリアは息を呑む。

 ――これは……ティーン国の文字じゃない。
 
 一瞬、意味を理解できなかった。

 ということは、誰かが後から……?

 ユリアは紙片の内容を読み、息を呑んだ。

『ティーン国の力を受け継ぐには、
 ティーン国の者同士であること。
 
 力を持つティーン国の女性と、
 王族の男性であること』

 文字を読んだ瞬間、心臓が大きく跳ねた。

 ――どうして……力のことが、ここに……?
 ここはアルジール国であって、ユーハイム国ではないのに……。

 額に、冷たい汗が滲んだ。

 ――もし、この国の誰かが、この力の存在を知っていたとしたら。
 私が、この国に……

 嫌な予感が、胸の奥で静かに膨らんでいった。
 手から力が抜け、本を取り落としそうになり、ユリアはその場に座り込んだ。

 ――でも……私が嫁いできた時点では、力の存在は知られていなかったはず。
 力を使ってしまったのは、あの時が初めてで……
 知っている者など、いなかったはずなのに……。
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