敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「本当に資源のためだと?
 ――違う。すべては、お前を奪うためだ。息子が殺されたことも、戦を始めるには都合が良かったがな」

 先王は、愉しげに口元を歪めた。

「……ど、どういう意味でございますか……? では、あの戦争は……私を……奪うためだけに……?」

 声が震え、言葉が途切れる。

 ――じゃあ……私のせいで……多くの人が……。

「そうだ」

 即答だった。

「そんな……。では、私をアルジール国に嫁がせた時から……私に力があることを、ご存知だったのですか?」

 ユリアは信じられない思いで、何度も首を横に振った。

「いや。お前の力は失われたと聞いていた。だがな……私は疑っていた。本当に失われたのかどうかを」

 ユリアの胸が、嫌な音を立てて跳ねた。
 思わず視線を逸らす。

「ユーハイムの王は、あっさりと信じたようだが……私は違う。あんな愚か者と一緒にするな」

 フン、と鼻で笑う。

「私は間者を送り、お前のことを徹底的に調べさせた。だが……どれほど探らせても、力の確証は掴めなかった」

 一拍、言葉を区切り――。

「――ただ一つ。
 お前が唯一、心を許していた存在を除いてはな」

 先王は、意味深な視線をユリアに向け、
 ゆっくりと口角を吊り上げた。

「……お前の兄だ」

 その不気味な笑みに、ユリアの背筋を冷たいものが走った。

「お前の兄は、我が国との戦で死んだそうだな……。――随分と、腕の立つ騎士だったと聞いているが?」

「……何が、言いたいのですか……?」

 ユリアが眉間に深く皺を寄せて問い返すと、先王は、いっそう愉しげに口角を吊り上げた。

「お前の兄は、どのようにして死んだと思う?」

 ユリアの目が、はっと見開かれる。

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