敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

76 決意の夜

 ユリアは自室へ戻ると、静かに椅子へ腰掛けた。
 先王に言われた言葉が、何度も頭の中で反芻される。

 ――一週間。
 選択肢などない。

 ユリアは思わず頭を抱えた。
 胸の奥が締めつけられ、息が浅くなる。

 どれほどの時間、そうしていただろうか。
 やがて、ユリアはゆっくりと顔を上げ、立ち上がった。
 その表情には、迷いよりも――
 何かを決めた者の静けさが宿っていた。


 その晩、エルフナルドは、朝に告げていた通り、夜も更けた頃に寝室へ戻ってきた。

「ユリア? 起きていたのか。先に休んでいていいと言っただろう」

 長椅子に腰掛けているユリアの姿を見つけ、声をかける。

「エルフナルド様、ご公務お疲れ様でございました」

 ユリアは立ち上がり、ゆっくりと彼の方へ歩み寄った。

「夕方に少し仮眠を取ってしまいまして……そのせいか、目が冴えてしまって。眠れずに起きていたのです」

「そうか……」

 エルフナルドはユリアを見つめ、少し間を置いてから言った。

「セルビアに聞いたが、今日は具合が悪かったのだろう? それで寝ていたのか?」
「ええ。途中からお天気も崩れましたし、そのせいかと。でも……もうすっかり良くなりました」

 表情を悟られないよう、ユリアは俯きがちに答えた。

「……そうか」

 短く返しながらも、エルフナルドはどこか引っかかるように、ユリアから視線を外さなかった。

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