敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

82 解放と束縛

 そんな生活がしばらく続いた頃、フレドリックは先王に呼び出された。

「お呼びですか、先王陛下」

 フレドリックは、王の前に進み出ると静かに跪いた。

「お前は――あの女を、本気で孕ませる気はあるのか?」

 先王は、低く抑えた声の奥に苛立ちを滲ませながら問いかけた。

「何をおっしゃっているのですか? 僕は毎日、あの女に子種を注いでおります。それでも身籠らぬのは、あの女が悪いのです!!」

 フレドリックは、感情を抑えきれず声を荒げた。

「……お前は、何も分かっておらん」

 先王は、冷たい視線でフレドリックを見下ろした。

「先日、あの女の姿を見てきたが……ひどく痩せておった。あれでは子はできん。医官でなくとも、この私にでも分かるわ。お前は、一体何をしている?」

 苛立ちを含んだ声が、重く室内に落ちる。
 その時、控えていた医官が一歩前に進み出て、深く頭を下げた。

「失礼ながら……私からも申し上げます。ユリア様のご様子ですが、初めの頃と比べ、著しく衰弱されております。先王陛下のお言葉の通り……今の状態では、妊娠は難しいかと……」
「――それは、僕が悪いと言っているのか?」

 フレドリックは、医官を睨みつけた。

「……いえ、そのような意味では……。ただ、子を身籠り、出産に至るには、心身ともに健康であることが不可欠です」

 医官は、言葉を選びながら慎重に続けた。

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