敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「……それで?」

 フレドリックは怒りを滲ませたまま、先を促した。

「はい。ユリア様は、長く同じ部屋に閉じ込められていると伺っております。少し……自由をお与えになった方がよろしいかと。精神面が安定すれば、食事も自然と摂れるようになるかと思われます」

 その言葉を聞いていた先王は、しばらく黙り込み、顎に手を当てた。

「……なるほどな」

 やがて、ゆっくりと口を開く。

「致し方あるまい。やり方を変えよう。私に、いい案がある」

 翌朝、先王はユリアが軟禁されている部屋を訪れた。
 扉が開く音に、ユリアは反射的に顔を上げる。
 そこに立っていた人物を見て、僅かに目を見開いた。

「久しぶりだな。……少し見ぬうちに、随分と痩せたものだ」
「……」

 ユリアは何も答えず、ただ虚ろな目で先王を見上げた。

「お前、このまま子も身籠らず……いずれ死ぬつもりではあるまいな?」

 その言葉に、ユリアの胸が小さく跳ねた。

 ――ばれて、いる……。

 この地獄のような日々の中で、ユリアは考えていた。
 自分が死ねば、この力も、争いも、すべて終わるのではないかと。

 何度も終わり方を考えた。
 だが、この部屋には何もない。
 だから――食べなかった。眠らなかった。
 それだけが、唯一自分で選べることだった。

 このまま消えられるのではないかと――
 それだけを、考えていた。
 
「お前が死ぬことを……この私が許すとでも思ったか?」
「……」

 先王は、冷酷な眼差しでユリアを睨みつけた。
 ユリアは、その視線から目を逸らすことができなかった。
 次の瞬間、先王は歩み寄り、ユリアの肩に手を置いた。
 びくりと、ユリアの身体が強張る。

「お前に死なれては困るのだ。……私には、お前が必要なのだから」

 急に浮かべられた穏やかな笑みが、かえって不気味だった。
 肩を掴まれた部分に、思わず力が入る。

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