敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 ――ユリアが、自分に子をねだった、あの日。

 今思えば、あの時のユリアは、明らかに様子がおかしかった。
 それでも、自分を求めてくれたことが嬉しくもあった。
 だが、いざ体を重ねようとした時に見せたユリアの表情は、まるで心がここにないようで――。

 その違和感に苛立ちを覚え、エルフナルドは無意識のうちに距離を取った。
 自分だけが想っているのではないか、という疑念が胸を刺し、ユリアを避けるようになった。

 そして、避け続けて六日目。
 ユリアは、一通の手紙を残して王宮から姿を消した。

 ――あの日、抱いてやればよかったのか?
 そうすれば、あいつは出て行かなかったのか?
 抱かなかったことが、王妃としての自信を完全に奪ったのか?

 だが、どう考えても――。
 あの日、ユリアが子を欲したのは、あいつ自身の意思とは思えなかった。

 エルフナルドは両手で顔を覆い、深く俯いた。

「考えれば考えるほど……答えが出ない。直接、あいつの口から聞ければ、諦めもつくと思った。だが……見つからない。もう三ヶ月だ」

 拳を握りしめる。

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