敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「一体、どこにいる……。本当は、こんな晩餐会に参加している場合ではないというのに……」
「……お前さ、俺が思ってた以上に姫を想ってたんだな」

 サリトスは肩をすくめ、わざと軽い調子で言った。
 場の空気を和らげようとする、いつもの癖だった。

「前にルトアへ来た時のお前の嫉妬ぶりを見てりゃ、分かるが……。一度ルトアとの契約をすっぽかしたお前には、今回は絶対に出席するしかなかったからな」
「分かっている。だから、こうして参加している」
「……参加してるだけだろ。心は全然ここにない。今だって未練たらたらで……正直、見てられんぞ。なあ、カリル?」

 傍で二人の会話を聞いていたカリルは、何も答えず、ただ小さく首を横に振った。
 
「あの……失礼いたします」

 三人のもとへ、アルジール国の護衛が一人、控えめに声をかけてきた。

「舞踏会をお楽しみのところ申し訳ございません。ですが、急ぎで陛下にお伝えすべき件がございまして……お時間をいただけますでしょうか」
「何だ? 話してみろ」

 エルフナルドは怪訝な表情を浮かべながらも、護衛に続きを促した。

「ユリア様の侍女より、陛下宛の手紙を預かっております。至急、お目通しいただきたいとのことで――」
「ユリアの……侍女だと?!」

 思わず声を荒げながらも、エルフナルドは差し出された手紙を受け取った。
 封を切り、目を走らせた瞬間、その表情はみるみる険しさを増していく。

「おい、エルフナルド。何て書いてある?」

 沈黙を不審に思い、サリトスが堪えきれず問いかけた。

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