敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「ユリアが……王宮に姿を見せた、と……」
「本当か?! それなら良かったじゃないか! そうか、姫は無事だったんだな……」

 サリトスは、安堵と喜びの混じった表情を浮かべた。

「……だが、それだけじゃない」

 エルフナルドは、手紙から視線を離さず低く続けた。

「王宮には顔を出しただけで、すぐに帰っていったそうだ。
今は……フレドリックと共に暮らしている、と書かれている」

 サリトスは眉をひそめた。
 
「……は? おい、それどういうことだ。なんで、フレドリック様と一緒にいる?」
「……詳しい事情までは書かれていない。だが、ユリアは自分の意思で王宮を出たのだと……そう言っていたらしい」

 エルフナルドは手紙を強く握りしめると、踵を返し、会場の出口へと歩き出した。

「おい、待て! まさか……今すぐ帰る気じゃないだろうな?」

 慌てて、サリトスとカリルが両手を広げ、行く手を塞いだ。

「ユリアが見つかったんだぞ?!」
「なりません、陛下」

 カリルは一歩前に出て、申し訳なさそうな、それでいて揺るぎない目でエルフナルドを見据えた。

「以前はキャロル姫が間に入ってくださったおかげで事なきを得ました。ですが、ルトア王は二度目を許すようなお方ではありません。ここで席を立てば、これまで築いてきたルトアとの関係は完全に破綻します」

 言葉を選びながら、静かに続ける。

「陛下のお気持ちは痛いほど分かります。ですが……国王としての立場を、お考えください」
「……くそっ」

 エルフナルドは歯を食いしばり、悔しさを滲ませて吐き捨てるように呟いた。
 そして、振り返ると――
 再び、何事もなかったかのように晩餐会の会場へと足を向けた。
 その背中には、怒りと焦燥、そして抑えきれない不安が重くのしかかっていた。
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