敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
86 貴方の元には
ユリアが次の日、庭園を訪れると、そこでクリックと再会した。
突然現れたユリアの姿に、クリックは驚きを隠せなかったが、事情を簡単に伝えると、それ以上深くは問いただしてこなかった。
それがユリアには、ありがたくもあり、同時に胸が痛むことでもあった。
ユリアは、再び王宮に足を踏み入れることを、心の底では強く嫌悪していた。
一番恐れていたのは、エルフナルドに会ってしまうこと。
だが、たとえ他の誰であっても、真実を語ることはできず、嘘を嘘のまま貫かなければならない。
それがどれほど心をすり減らすことか、ユリアは痛いほど分かっていた。
心配して声をかけてくれるアリシアやクリックに、優しい嘘を重ねなければならないことが、何よりも辛かった。
それでも、屋敷に籠もることは許されず、日中は王宮で過ごすよう命じられていた。ユリアに選択肢はなかった。
初めのうちは、王宮の廊下を歩くだけで胸が締めつけられ、エルフナルドと鉢合わせするのではないかと神経を張り詰めていた。
やがて、執務で不在になりやすい時間帯を見計らい、庭園に足を運ぶようになった。
――会ってしまえば、きっと壊れてしまう。
そんな日々が、二週間ほど続いた頃だった。
ユリアが書庫で本を探していると、静かな空気を切り裂くように、扉が開く音がした。
「アリシア? 入口のところに脚立があるから、取ってくれないかしら。上の棚の本が――」
言いながら振り返ったユリアの視界に映ったのは、アリシアではなかった。
そこに立っていたのは、エルフナルドだった。
ユリアは、息を呑み、目を見開いた。
今日は視察で王宮には戻らないと聞いていた。
まさか、この場所で、こんな形で会うなど、想像すらしていなかった。
突然現れたユリアの姿に、クリックは驚きを隠せなかったが、事情を簡単に伝えると、それ以上深くは問いただしてこなかった。
それがユリアには、ありがたくもあり、同時に胸が痛むことでもあった。
ユリアは、再び王宮に足を踏み入れることを、心の底では強く嫌悪していた。
一番恐れていたのは、エルフナルドに会ってしまうこと。
だが、たとえ他の誰であっても、真実を語ることはできず、嘘を嘘のまま貫かなければならない。
それがどれほど心をすり減らすことか、ユリアは痛いほど分かっていた。
心配して声をかけてくれるアリシアやクリックに、優しい嘘を重ねなければならないことが、何よりも辛かった。
それでも、屋敷に籠もることは許されず、日中は王宮で過ごすよう命じられていた。ユリアに選択肢はなかった。
初めのうちは、王宮の廊下を歩くだけで胸が締めつけられ、エルフナルドと鉢合わせするのではないかと神経を張り詰めていた。
やがて、執務で不在になりやすい時間帯を見計らい、庭園に足を運ぶようになった。
――会ってしまえば、きっと壊れてしまう。
そんな日々が、二週間ほど続いた頃だった。
ユリアが書庫で本を探していると、静かな空気を切り裂くように、扉が開く音がした。
「アリシア? 入口のところに脚立があるから、取ってくれないかしら。上の棚の本が――」
言いながら振り返ったユリアの視界に映ったのは、アリシアではなかった。
そこに立っていたのは、エルフナルドだった。
ユリアは、息を呑み、目を見開いた。
今日は視察で王宮には戻らないと聞いていた。
まさか、この場所で、こんな形で会うなど、想像すらしていなかった。