敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「……私に会うことが、そんなに驚くことか?」

 低く静かな声が、書庫に落ちる。

「ここは、私の王宮だぞ」

 ユリアは言葉を失い、ただ立ち尽くした。

「何故、私を避ける?」

 問いかけに、答えは出ない。

「……避けてなど、おりません」

 かろうじてそう返すと、エルフナルドはユリアを逃がさぬよう、じっと見据えた。

「では何故、私に一度も顔を見せなかった。お前が王宮を出て、私が心配しなかったとでも思っているのか?」

 鋭く、抑えた声が胸に突き刺さる。

「……」
「今は、フレドリックと共に暮らしていると聞いた。それは……お前の、本心からか?」

 その視線から、ユリアは逃げられなかった。

「どういう意味でございましょうか」

 努めて平静を装った声に、エルフナルドはわずかに眉をひそめる。

「お前がいなくなったあの日、手紙を見つけて……正直、正気ではいられなかった。信じられず、すぐに探させたが……お前は見つからなかった」

 苦しげに言葉を紡ぐエルフナルドに、ユリアの胸が締めつけられる。

「侍女から聞いた。王宮を出てから体調を崩し、その後、フレドリックに助けられたと……」

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