敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
――違う。
助けられたんじゃない。
だが、その真実を口にすることは許されない。
ユリアは一度目を閉じ、深く息を吸い込んでから、再びエルフナルドを見た。
「……私は、この王宮での生活に、王妃であることに……疲れ果てていました。あの晩は、自暴自棄になってしまって……陛下に、あのようなことを……。不快な想いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」
声が震えぬよう、必死に抑えながら続ける。
「陛下と距離を置いた数日で、考えました。私は、王妃には向いていなかったのです。この国に嫁ぐことが条件だったことも、理解しておりました。……それでも、どうしても、あの場所から逃げたかった」
「謝罪が欲しいわけじゃない!」
エルフナルドの声が強まる。
「フレドリックと共にいるのは、お前の本心かと聞いている!」
――本心なわけがない。
私が共にいたいのは、あなたしか……。
それでも、ユリアは顔を上げた。
「……私の意思です。王宮から逃げ出した私を、フレドリック様は受け入れてくださいました。……とても、心強かったのです」
「私がお前を避けていた、あの数日間が……そこまでお前を追い詰めていたというのか?」
エルフナルドの声には、痛みが滲んでいた。
「共にありたいと言った私の言葉は、届かなかったか? お前も……私と共にいたいと、願っていたではないか」
――願っていた。
あなたとの子を、望んでしまうほどに。
「……そんなこと、言いましたでしょうか」
静かな書庫に、その言葉だけが落ちた。
助けられたんじゃない。
だが、その真実を口にすることは許されない。
ユリアは一度目を閉じ、深く息を吸い込んでから、再びエルフナルドを見た。
「……私は、この王宮での生活に、王妃であることに……疲れ果てていました。あの晩は、自暴自棄になってしまって……陛下に、あのようなことを……。不快な想いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」
声が震えぬよう、必死に抑えながら続ける。
「陛下と距離を置いた数日で、考えました。私は、王妃には向いていなかったのです。この国に嫁ぐことが条件だったことも、理解しておりました。……それでも、どうしても、あの場所から逃げたかった」
「謝罪が欲しいわけじゃない!」
エルフナルドの声が強まる。
「フレドリックと共にいるのは、お前の本心かと聞いている!」
――本心なわけがない。
私が共にいたいのは、あなたしか……。
それでも、ユリアは顔を上げた。
「……私の意思です。王宮から逃げ出した私を、フレドリック様は受け入れてくださいました。……とても、心強かったのです」
「私がお前を避けていた、あの数日間が……そこまでお前を追い詰めていたというのか?」
エルフナルドの声には、痛みが滲んでいた。
「共にありたいと言った私の言葉は、届かなかったか? お前も……私と共にいたいと、願っていたではないか」
――願っていた。
あなたとの子を、望んでしまうほどに。
「……そんなこと、言いましたでしょうか」
静かな書庫に、その言葉だけが落ちた。