敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「今の私は……救い出してくださったフレドリック様を、お慕いしております。そして、フレドリック様も……それに応えてくださいました」

 はっきりと告げるユリアの言葉に、沈黙が落ちた。

「……もう一度言ってみろ」
「……」
「私の目を見て、もう一度言え」

 ユリアは、崩れそうになる心を必死で押し殺した。
 それでも、視線を逸らさずに告げる。
 
「私は、フレドリック様をお慕いしております」

 長い、長い沈黙。

「…………そうか」

 
 エルフナルドは、ゆっくりと視線を外した。

「父上には、私から離縁の手続きを申し出ておく」

 そう言い残し、書庫を去っていく背中を、ユリアはただ見つめていた。
 扉が閉まった瞬間、頬を一筋の涙が伝う。

 ――これで、本当に終わってしまったのね。
 これでよかった。
 これ以上、誰も巻き込んではいけない。
 そのために、何度も何度も、表情に出さない練習をしたのだから。
 信じてくれて、よかった。
 ……でも、信じないでほしかった。

「お前は嘘がつけない」と言っていたのに。
「表情で絶対わかる」とそう言っていたのに……。
 
 ユリアは、そっと涙を拭った。
 この王宮で、泣く姿など、誰にも見られてはならなかった。
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