漆黒の花嫁 ーその手をもう一度
ほどなくして、婚姻の儀が始まった。
エルフナルドは、神父の立つ祭壇の前に立ち、まだ顔も見ぬ妃の到着を待っていた。
そういえば、妃となる者がどのような容姿なのか――それすら、全く聞いていなかったことに、今さらながら気付く。
自嘲気味に小さく息を吐いた、その時、大きな扉が静かに開かれた。
視線を向けると、そこにはユーハイム国の姫が、真っ直ぐこちらを見つめ立っていた。
しかしべールに覆われているため、その表情までは分からない。
ユリアがゆっくりとバージンロードを進み、近づくにつれ、その姿がはっきりと見えてくる。
誓いの言葉が終わり、エルフナルドがそっとベールを上げた瞬間――
漆黒の髪色には不釣り合いなほど澄んだ、アイスブルーの瞳と視線が重なった。
一瞬、時が止まったように、エルフナルドは動けずにいた。
その沈黙を破るように、神父が咳払いをした。
「……誓いのキスを」
促され、ふたりは静かに唇を重ねた。