敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 翌日、エルフナルドは先王のもとを訪れ、ユリアとの離縁を申し出た。
 激しい叱責や反対を覚悟していたが、意外にも、先王は淡々とそれを受け入れた。
 そのあまりにも落ち着いた反応に、かえって胸の奥がざわつき、少しだけ引っかかるものを感じた。

 ――あれほどユリアに執着しているように見えた父上が、なぜ、こうもあっさりと……?
 何かがおかしい気がした。

 執務室に戻ったエルフナルドの顔色は優れず、深い溜息を何度も漏らしていた。

「いかがされたのですか、陛下。最近、考え事をされていることが多いようですが……今日は特に」

 側近のカリルが、案じるように声をかける。

「……いや、何でもない」

 短く答えながら、エルフナルドは視線を落とした。

 ――考えたところで、仕方がない。
 ユリアは、もう自分の元へは戻らない。
 忘れなければならない。
 忘れなければ、前に進めない。

 そう自分に言い聞かせながらも、胸の奥に居座る痛みは少しも薄れようとはしなかった。
 夜が更け、月明かりが窓から差し込む中、酒の匂いと静寂だけが、彼が“王であること”を思い出させるように、孤独な心をじっと見つめていた。
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