敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 翌日。
 ユリアが薬事室で作業をしていると、クリックがやって来て声をかけた。

「最近は、どのような薬をお作りになっているのですか?
 以前にも増して、ずいぶん真剣なご様子ですが……」
「……栄養剤のようなものを作っているんです。体調を崩して体重が減ってしまったので。今はだいぶ戻りましたが、もっと少量でも効率よく栄養を補給できるものを作ろうと思いまして。戦争の時には、そういったものがとても役立ったんです。戦時だけでなく、非常食としても使えますから」
「それは便利なものですね。長期の視察が多いこの国では、重宝されるかもしれません」

 クリックは感心したように、そう頷いた。

「特に南の国の薬草が、栄養剤の要になるんです。南の薬草は本当に用途が広くて……。もっと栽培量を増やせればと思っているんです」

 そう言いながら、ユリアは作業していた薬草を棚へと戻した。

「そうだ、クリック様。もしよろしければ、この機会に南の薬草のお手入れ方法を覚えていただければと思って、簡単なメモを書いてきたのですが」
「本当ですか? ありがとうございます」

 クリックは嬉しそうにメモを受け取り、目を通した。

「とても分かりやすいですね。早速ですが、質問してもよろしいでしょうか?」
「もちろんです。庭園へ行きましょうか」

 それから数日かけて、ユリアはクリックに薬草の手入れ方法を丁寧に伝えた。
 クリックが王宮へ戻ると、ユリアは再び薬事室に籠もり、薬草を煎じた。
 クリックには「栄養剤を作っている」と話したが、それは嘘だった。

 ユリアは、ある計画のために――誰にも知られぬよう、毎日薬草を煎じ続けていた。

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