敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「ユリア様は……以前のユリア様とは、同じとは思えません。一見すると、変わっていないように見えるのですが……何を考えていらっしゃるのか、表情から読み取れないのです。あんなにも感情が顔に出るお方でしたのに……。陛下も、そうお感じになりませんか?」
「……そうだな」

 エルフナルドは、低く答えた。

「お前の言う通りだ。私も、ユリアが国に戻ってきてから一度会ったが……以前のあいつとは、まるで別人のようだった。ユリアから離縁を申し出られ、それを受け入れはしたが……今も、腑に落ちないでいる」

 クリックは、意を決したように、さらに一歩踏み込んだ。

「ユリア様が、フレドリック様をお慕いしているなど……やはり、どうしても信じられません。確信があるわけではありませんが……ユリア様は、何かを隠していらっしゃるように思うのです。そして……何か、危険なことをされているのではないかと……どうしても、その考えが頭から離れません」

 その言葉に、エルフナルドは微かに息を詰めた。

 ――以前、アリシアにも、同じようなことを言われた。
 表情が違う。何かがおかしい、と。

「……分かった」

 エルフナルドは、ゆっくりと頷いた。

「もう少し、ユリアの動向を注視させる」
「ありがとうございます」

 クリックは深く頭を下げ、執務室を後にした。
 その背を見送りながら、エルフナルドの胸に、
 嫌な予感だけが、はっきりと形を持ち始めていた。
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