敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

89 疑念の確信

「ユリア様!!」

 別の日。
 ユリアが王宮を後にし、屋敷へ戻るため正門で馬車に乗ろうとした時、背後から切迫した声がかけられた。
 振り返ったユリアの視界に入ったのは、今しがた王宮へ帰還したばかりと思しき、馬上のセルビアの姿だった。
 セルビアはユリアを見つけるなり、慌ただしく馬を降り、駆け寄って跪いた。

「ご無事で……本当に何よりです! ご帰還の報を受け取っていたにも関わらず、すぐにお顔を出せず、誠に申し訳ございませんでした!」
「顔を上げて、セルビア」

 ユリアは穏やかに言い、セルビアを見下ろした。

「勝手に王宮を出たのは私よ。貴方が謝ることじゃないわ。むしろ、謝るべきは私の方。私が出ていってから、別の任務に就いていたと聞いたわ。私の護衛のために雇われていたのに……本当に、ごめんなさい」

 セルビアは、ユリアが王宮を去った直後のことを思い出していた。
 自分の責任だとエルフナルドに詫び、必死に捜索の許可を願い出た日々。
 数十名の騎士を率いての捜索は、約三ヶ月にも及んだが、結局ユリアを見つけることはできなかった。
 その最中に起きた街での暴動。
 人手不足を補うため派遣され、そのまま現地任務に就くことになったのが、つい先日までの経緯だった。

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