敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「任務が終わり、ようやく王宮へ戻ることができました。ユリア様……本当に、大丈夫なのですか? あの日、私が――」
「セルビア」

 ユリアはセルビアの言葉を遮るように名を呼び、真っ直ぐにその目を見つめた。
 その視線には、懇願とも警告ともつかない、強い意思が宿っていた。

「……本当に、問題ないの。私は自分の意思で出て行ったの。貴方を……欺いてね。……今日はもう帰らなくちゃ」

 ――セルビア、お願い。
 これ以上、何も言わないで。
 貴方なら……伝わるはず。

「……はい。どうか、お気をつけて」

 ユリアの視線の意味を察したのか、セルビアはそれ以上踏み込まず、深く頭を下げた。

 ――今の視線は……何だ?
 誰かに、見張られている?
 だとしたら……一体、誰に?
 そして、ユリア様は“どこ”へ帰っていかれるというのだ……?

 胸に焦りと不安を抱えたまま、セルビアは王宮へと足を向けた。
 真っ先に向かうべき場所は、ただ一つだった。

コンコン

「セルビアです。ただいま帰還致しました」
「入れ」

 返答を聞き、セルビアは執務室へ入室した。

「この度、任務完了につき、王宮へ帰還致しました」
「ご苦労だった。今後の任務だが――」
「陛下!!」

 セルビアは、珍しく大きな声でエルフナルドの言葉を遮った。

 その剣幕に、エルフナルドも、傍に控えていたカリルも思わずセルビアへ視線を向ける。

「先程、帰還の際にユリア様にお会いしました。……ユリア様は今、誰とお過ごしなのでしょうか?」
「……フレドリックだ」

 エルフナルドは、静かに答えた。

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