敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「フレドリック様が……? なぜですか? ユリア様は王宮に戻られたのでは? 一体、何が……」
「お前には任務に集中してもらう必要があったため、詳しくは伝えていなかったが……ユリアは自ら王宮を出たと言っていた。行く当てもなく体調を崩していたところを、フレドリックに救われたと。そして今は、フレドリックを慕っているから、私とは離縁したいと……そう申し出てきた」
「そんな……。フレドリック様を慕っていると、ユリア様ご自身が……?」

 セルビアは、信じられないという表情で問い返した。

「そうだ」
「……それを、陛下は……信じられたのですか?」

 その言葉に、エルフナルドの声色が低くなった。

「……何が言いたい?」
「今日、私が拝見したユリア様は……何も聞いてほしくない、何も察してほしくない、そんな口ぶりでした。そして……視線も。あれは、誰かに見張られているとしか思えません」

 セルビアは一歩踏み込み、続けた。

「ユリア様が帰る先がフレドリック様の屋敷だとするなら……見張っているのは、フレドリック様ということになります。あのお二人が、恋人のような関係になるなど……私には、どうしても信じられません」
「……」
「ユリア様が、自ら“慕っている”と言ったからといって、それが本心だと……陛下は、本当にそうお思いなのですか? ユリア様と共に過ごしてこられた日々の中で感じたことこそが、真実ではないのですか!!」

 セルビアの必死な訴えに、エルフナルドの脳裏に、数々の記憶が蘇った。

 ――舞踏会で手を取った時の微笑み。
 ルトアで迎えた最後の夜。
 市場で買った、あのブレスレット。
 自分の瞳の色をした石を、嬉しそうに見つめていたユリア……。

 エルフナルドは目を閉じ、額に手を当てた。

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