敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「……聞き分けてくれ、エルフナルド」

 先王は声を落とし、諭すように言う。

「この国を守るには、この娘の力が必要だ。ただ持っているだけでは足りない。“増やす”ことが重要なのだ」

 その言葉で、すべてが繋がった。

 弟の行動。
 ユリアが閉じ込められた理由。
 そして、自分が知らされなかった前提。

――ああ……。

 最初から、こうだったのだ。

 ユリアの父だけではない。
 自分の父までもが、彼女の力を“資源”として見ていた。

 拒んだのは、自分だけだった。
 だから、弟に託した。
 
 ユリアの意思など――
 最初から、どこにもなかった。
 
 エルフナルドの手が、怒りで震えた。

「エルフナルド……頼む……!」

 アシュリー王が叫ぶ。

「もう……お前しかいないのだ!!」

 ――一瞬だった。

 エルフナルドの剣が、一直線に王の胸を貫いた。
 先王は、言葉を失ったまま崩れ落ちる。

「ユリア!!」

 すぐに駆け寄り、彼女を抱き上げる。
 
「しっかりしろ!!」

 赤黒く変色し始めた手足を必死に擦る。

「力は……!? まだ使えるか!? 自分を治せ!!」

 ユリアは、虚ろな瞳で彼を見上げた。

「……ごめんなさい……」

 震える手が、彼の頬に触れる。

「あなたの……弟を……。あなたの……父上を……」
「そんなことは、どうでもいい!!」
 
 声が、掠れた。

「生きてくれ……! どうか……生きてくれ!!」

 ユリアは、かすかに微笑み、首を横に振る。

「……泣か……ないで……」

 その手が、静かに落ちた。

「ユリア!!」

 強く抱きしめる。

「誰か!! 医者を呼べ!!」

 ――まだ、脈はある。
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