敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

 
――エルフナルド様――

 このような手紙を書き残す事、お許しください。

 エルフナルド様の弟君を手にかけた事、本当に申し訳なく思っております。
 どのような理由があろうとも、私がしてしまった事は決して許されるものではありません。
 それでも……どうか、最後まで読んでいただけますでしょうか。

 私の力が人に知られてしまった以上、先王陛下やフレドリック様だけでなく、きっとこれからも、この力を求める者が現れます。
 そのたびに争いが生まれ、誰かが傷つき、そしてまた、貴方が苦しむことになる。
 
 その争いに、もう貴方を巻き込みたくなかった……。
 
 私が生きている限り、この力は利用され続けます。
 争いの火種は消えません。

 だから私は――
 この身をもって、終わらせる事を選びました。
 
 私は、貴方の隣にいるべき人間ではありません。

 それでも……私が生きてきて、唯一、この力があって良かったと思えた事があります。
 
 それは、あの雨の日、エルフナルド様をお救い出来たことです。
 本当はずっと、勝手にお救いしてしまった事を後悔しておりました。
 大きな古傷を残してしまったから……。
 けれど、感謝していると言っていただけたあの日、初めて、自分を誇ってもいいのだと思えました。
 私が、このアルジール国でエルフナルド様と共に過ごした時間は、私にとってかけがえのないものでした。
 辛い事ばかりの人生でしたが、最後に貴方に出会えた事。
 それだけで、生きてきた意味があったと思えました。
 
 エルフナルド様。
 私は、貴方をお慕いしておりました。
 
 私がお慕い申し上げたのは、貴方だけです。

 どうか、この国を、争いのない場所へ導いてください。
 エルフナルド様なら、きっと出来ると信じております。

 貴方の幸せを、心から願っております。
 どうか……どうか、幸せになってください。
 
 最後に、一つだけ我儘をお許しください。

 エルフナルド様からいただいた、このブレスレットを、
私と共に埋めていただけませんか。

 私にとって、それは唯一の宝物でした。

 この我儘を、お許しください。
                   ユリア

 
 最後の一行まで読み終えたとき、エルフナルドの手は、微かに震えていた。
 手紙を握りしめ、彼は静かに目を閉じる。

「ユリア……」

 その名を呼ぶ声は、あまりにも遅すぎた。
< 242 / 322 >

この作品をシェア

pagetop