敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
――エルフナルド様――
このような手紙を書き残す事、お許しください。
エルフナルド様の弟君を手にかけた事、本当に申し訳なく思っております。
どのような理由があろうとも、私がしてしまった事は決して許されるものではありません。
それでも……どうか、最後まで読んでいただけますでしょうか。
私の力が人に知られてしまった以上、先王陛下やフレドリック様だけでなく、きっとこれからも、この力を求める者が現れます。
そのたびに争いが生まれ、誰かが傷つき、そしてまた、貴方が苦しむことになる。
その争いに、もう貴方を巻き込みたくなかった……。
私が生きている限り、この力は利用され続けます。
争いの火種は消えません。
だから私は――
この身をもって、終わらせる事を選びました。
私は、貴方の隣にいるべき人間ではありません。
それでも……私が生きてきて、唯一、この力があって良かったと思えた事があります。
それは、あの雨の日、エルフナルド様をお救い出来たことです。
本当はずっと、勝手にお救いしてしまった事を後悔しておりました。
大きな古傷を残してしまったから……。
けれど、感謝していると言っていただけたあの日、初めて、自分を誇ってもいいのだと思えました。
私が、このアルジール国でエルフナルド様と共に過ごした時間は、私にとってかけがえのないものでした。
辛い事ばかりの人生でしたが、最後に貴方に出会えた事。
それだけで、生きてきた意味があったと思えました。
エルフナルド様。
私は、貴方をお慕いしておりました。
私がお慕い申し上げたのは、貴方だけです。
どうか、この国を、争いのない場所へ導いてください。
エルフナルド様なら、きっと出来ると信じております。
貴方の幸せを、心から願っております。
どうか……どうか、幸せになってください。
最後に、一つだけ我儘をお許しください。
エルフナルド様からいただいた、このブレスレットを、
私と共に埋めていただけませんか。
私にとって、それは唯一の宝物でした。
この我儘を、お許しください。
ユリア
最後の一行まで読み終えたとき、エルフナルドの手は、微かに震えていた。
手紙を握りしめ、彼は静かに目を閉じる。
「ユリア……」
その名を呼ぶ声は、あまりにも遅すぎた。