敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 午前の政務を終えたエルフナルドは、再びユリアの部屋へと足を運んだ。
 仕事の合間ごとに様子を見に行くことが、いつしか日課になっていた。

「ユリアの様子に、変わりはないか?」

 付き添っていた医官に問いかける。

「はい。特にお変わりなく……眠っていらっしゃいます」
「……そうか」

 眠っている。
 それだけの言葉が、今は救いだった。

コンコンッ

 控えめなノックの音の後、カリルが扉を開けた。

「陛下。セルビア殿がお見えです。ユリア様のお見舞いをしたいとのことですが」
「ああ……通してくれ」

 セルビアは部屋に入ると、まずエルフナルドに深く頭を下げ、それからユリアの元へと歩み寄った。

「ユリア様……」

 今にも崩れそうな声で、セルビアが名を呼ぶ。

「セルビア……すまない。お前の言った通りだった。私は……ユリアのことを、何一つ分かっていなかった」
「私に謝る必要はありません。陛下は、ユリア様をお救いくださいました」
「……救ってなどいない」

 エルフナルドは小さく首を振った。

「現に、ユリアは目を覚まさない。お前の忠告を受けた後、もっと早く迎えに行っていれば……こんなことにはならなかった」

 悔しさを滲ませたその横顔に、セルビアは静かに首を振る。

「南の国で内乱が起きたと聞いております。陛下は王です。国を優先されるのは、当然のことです」
「……王妃一人、守れなくて……何が王だ……」

 吐き出すようにそう呟き、エルフナルドは俯いた。

「ユリア様は……きっと目を覚まされます。どうか、信じましょう」
「……ああ。そうだな」

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