敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 しばしの沈黙の後、エルフナルドはゆっくりと顔を上げ、セルビアを見た。

「セルビア……。お前は、いつからユリアの側に仕えていた?」
「ユリア様が戦に参加されるようになったのは五歳の頃でした。それから、ずっとお仕えしております」
「……そうか」

 エルフナルドは小さく息を吸った。

「ユリアは……ユーハイムで、どのように過ごしていた? どんな暮らしをしていたのか……お前が知る範囲でいい。教えてくれないか」

 そして、わずかに声を落とす。

「私は……ユリアが望まないと思い、過去のことも、力のことも、聞かずにいた。辛いことを思い出させたくなかったからだ。だが……本当は、聞くべきだったのかもしれない」

 ――そうだ。
 私は、ただ怖かったのだ。

 すべてを知ってしまえば、ユリアの過去ごと背負える自信がなかった。
 彼女を支えられると胸を張って言える自分ではなかった。

 だから聞かなかった。
 ユリアのためだという言葉で、自分の弱さから目を逸らしていた。
 自分の力が知られる恐れも顧みず、あの少年を救った彼女に比べて――
 私は、あまりにも臆病だった。

 セルビアは静かに語り始めた。
 自分が見てきた、ユーハイム国でのユリアのことを。

 エルフナルドはその話を聞きながら、終始、胸を締め付けられる思いで、ただ黙って耳を傾けていた。
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