敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
***
その日の晩。
部屋の外はすっかり闇に包まれ、窓の外からはかすかな虫の音が聞こえていた。
アリシアが静かにユリアの部屋へと足を踏み入れる。
「ユリア様……。今夜は少し暑くなるようですので、氷を枕元に置かせていただきますね」
眠ったままのユリアにそう語りかけながら、アリシアはベッド脇のテーブルに、氷を入れた大きめの皿をそっと置いた。
「……アリ……シア……?」
かすれた、しかし確かに聞き覚えのある声。
アリシアは一瞬、自分の耳を疑い、次の瞬間、勢いよくユリアの方を振り返った。
「ユリア様!!」
ユリアは薄く目を開け、ぼんやりとアリシアを見つめていた。
「お目覚めになったのですね!! 本当に……本当に良かった……! ご気分は? どこかお辛いところはありませんか?」
感極まったように声を震わせるアリシアに、ユリアはゆっくりと微笑み返した。
「大丈夫よ……。心配かけて、ごめんね……」
「すぐに医官の方をお呼びしますね!」
アリシアは慌てて踵を返し、扉へと向かおうとする。
「待って……」
ユリアのか細い声に、アリシアは足を止めた。
「もう……日も暮れているし……。医官の方をお呼びするのは、明日で大丈夫よ……。それに……」
ユリアは自分の手足にゆっくりと視線を落とした。
「……たくさん、処置をしていただいたみたいだし……。今は、特に問題ないわ……」
「ですが……」
「本当に……大丈夫……。もう少しだけ……寝かせて?」
そう言って、ユリアは小さく息を吐き、再び目を閉じた。
「……分かりました。何かありましたら、すぐにお呼びください」
「ありがとう……」
ユリアは一度だけ目を開け、アリシアに視線を向ける。
その日の晩。
部屋の外はすっかり闇に包まれ、窓の外からはかすかな虫の音が聞こえていた。
アリシアが静かにユリアの部屋へと足を踏み入れる。
「ユリア様……。今夜は少し暑くなるようですので、氷を枕元に置かせていただきますね」
眠ったままのユリアにそう語りかけながら、アリシアはベッド脇のテーブルに、氷を入れた大きめの皿をそっと置いた。
「……アリ……シア……?」
かすれた、しかし確かに聞き覚えのある声。
アリシアは一瞬、自分の耳を疑い、次の瞬間、勢いよくユリアの方を振り返った。
「ユリア様!!」
ユリアは薄く目を開け、ぼんやりとアリシアを見つめていた。
「お目覚めになったのですね!! 本当に……本当に良かった……! ご気分は? どこかお辛いところはありませんか?」
感極まったように声を震わせるアリシアに、ユリアはゆっくりと微笑み返した。
「大丈夫よ……。心配かけて、ごめんね……」
「すぐに医官の方をお呼びしますね!」
アリシアは慌てて踵を返し、扉へと向かおうとする。
「待って……」
ユリアのか細い声に、アリシアは足を止めた。
「もう……日も暮れているし……。医官の方をお呼びするのは、明日で大丈夫よ……。それに……」
ユリアは自分の手足にゆっくりと視線を落とした。
「……たくさん、処置をしていただいたみたいだし……。今は、特に問題ないわ……」
「ですが……」
「本当に……大丈夫……。もう少しだけ……寝かせて?」
そう言って、ユリアは小さく息を吐き、再び目を閉じた。
「……分かりました。何かありましたら、すぐにお呼びください」
「ありがとう……」
ユリアは一度だけ目を開け、アリシアに視線を向ける。