敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「本当に……たくさん……心配かけて、ごめんね。
 ……いつも、こうしてお見舞いに来てくれていたのね……」

 そう言って、ベッド脇のテーブル――氷や花、水差しが並ぶそこに目を向けた。

「そんな……。私には、こんなことくらいしか出来ませんので……」
「とても……嬉しかったわ……。ありがとう……」

 ユリアはそう呟くと、今度こそ静かに眠りに落ちた。
 規則正しい寝息を確認し、アリシアは胸に手を当て、深く息をつく。
 そして小さく頭を下げ、音を立てぬよう部屋を後にした。
 その足でアリシアは、エルフナルドの執務室へと急いだ。

「今日はこのくらいでお休みになられては、いかがでしょうか」

 時計に目をやりながら、カリルが声をかける。

「ああ……そうだな。遅くまで付き合わせて、すまなかった」

 エルフナルドが椅子から立ち上がった、その時だった。

 コンコンッ

 執務室の扉を叩く音が響き、カリルが扉を開けると、息を切らしたアリシアが立っていた。

「遅くに失礼いたします! どうしてもお伝えしたいことがありまして……!」
「何かあったのか?」

 その切迫した様子に、エルフナルドは眉をひそめる。

「ユリア様が……先程、お目覚めになられました!」
「……本当なのか?」

 エルフナルドとカリルは、同時に息を呑み、アリシアを見つめた。

「はい。私が部屋を訪れたところ、確かに目を開けられました。医官をお呼びしようとしたのですが……明日で構わないので、もう少し休ませてほしいと……」
「……そうか」

 エルフナルドの表情に、ほっとした安堵の色が浮かぶ。

「今は……また眠っているのか?」
「はい。お話をされた後、すぐに眠りにつかれました。……医官をお呼びした方が良かったでしょうか。私、判断に迷ってしまって……」
「いや、構わない。私も少し様子を見に行こう。医官には明日の朝、改めて診察するよう伝えておく。……よく知らせてくれた。ありがとう。お前も、もう休みなさい」
「はい……」

 エルフナルドはそっと頷き、控えめに息を吐いた。
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