敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「あの……陛下……」
「どうした?」

 振り返ったエルフナルドと、視線が交わる。
 ユリアは意を決したように顔を上げた。

「お父上と……フレドリック様の事、申し訳ございませんでした……」

 言葉を選びながら、ユリアは一つひとつ続けた。

「謝罪して済む問題ではないと承知しております。……罪は、必ず償います。どのような処分であっても……」

 ユリアは固く目を閉じた。
 震えを必死に押し殺す、その姿。

「ユリア」

 エルフナルドは一歩近づいた。

「お前に、罪などあるはずがない」

 静かに、しかしはっきりと告げる。

「謝るべきは私だ。……私が、もっと早く気付くべきだった。お前にどれほど辛い思いをさせたか……すまない」

 そう言って、エルフナルドは深く頭を下げた。

「お、おやめください!」

 ユリアは慌てて声を上げた。

「陛下が頭を下げるなど……! 陛下は何も悪くありません。いつも私を助けてくださいました。あの日も……」
「いや……私の責任だ」

 エルフナルドは目を伏せたまま、続ける。

「父上が何か企んでいることは、最初から分かっていた。……それでも、まさかお前を……」

 言葉が詰まり、エルフナルドは目を閉じた。

「陛下……」

 ユリアは一瞬迷い、それから恐る恐る尋ねた。

「お父上と……フレドリック様は……その……」

 沈黙が落ちる。
 やがて、エルフナルドが口を開いた。

「……フレドリックは意識を取り戻している。処置も済み、状態は安定している。市場近くの館に幽閉している。父上も目を覚まし……今は王宮の地下牢にいる」
「……そう、でしたか……」

 ユリアの胸に、安堵と、割り切れない感情が同時に広がった。

「生かすと決めたのは私だ。……だが、もう二度と、お前に手を出させはしない。必ず、私が守る」
「……陛下が、お父上を殺していないと分かって……安心しました」

 ユリアは小さく息を吐いた。

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