敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「あの日……私は、一人で全てを終わらせるつもりでした。陛下の手を汚させるつもりなど……なかったのです」

「父上は……お前にしてきたこと以外にも、数え切れぬ罪を犯してきた」

 エルフナルドは拳を強く握りしめた。

「国のためなどと口にしていたが、真実は違う。ただ、支配したかっただけだ……。私はそれを分かっていながら……止められなかった」

「……そんなに、ご自分を責めないでくださいませ」

 ユリアは、静かに言った。

「陛下はこの国を良くしようとしてくださっていました。ユーハイム国も……本当に暮らしが良くなりました。私は……この国の王が、陛下で良かったと思っています」

 少しだけ、声を落として続ける。

「陛下が守っておられる平和を……私も守りたかった。ただ……一人で抱え込むべきではなかったのです」
「……お前の立場なら、無理もない」

 エルフナルドは首を横に振った。

「もう、自分を責めるな。お前を責める者など、誰一人いない」
 ――……私もだ。

 ユリアは何かを言いかけて、やめた。
 エルフナルドもまた、同じように口を閉じた。
 それから二人は言葉を交わさず、ただ夜空を見上げていた。
 静かな時間が、ゆっくりと流れた。
 やがて、エルフナルドが口を開いた。

「少し冷えてきた」

 エルフナルドはユリアを支えながら、部屋へ戻った。

「明日の朝、医官を手配しておく。私は隣の部屋にいる。何かあれば声を出してくれ。護衛もつけている」

「……ありがとうございます」

 ユリアのその言葉に、エルフナルドは一瞬だけ足を止め、静かに頷いた。
 
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