敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 その日の晩、エルフナルドがユリアの部屋を訪ねてきた。
 ユリアは朝の医官の診察結果を、包み隠すことなく伝えた。
 エルフナルドは、特に口を挟むこともなく、ただ静かにユリアの話を聞いていた。
 その表情から、すでにおおよその内容は把握していたのだろうと、ユリアは悟った。

「この部屋は、以前と同じように使ってくれて構わない。訓練で必要な物や人材がいれば、全てこちらで手配しよう。急がず……ゆっくりやればよい」

 エルフナルドは真っ直ぐにユリアを見つめ、迷いのない声音でそう言った。

「陛下……。昨日も申し上げましたが……私は王弟に手をかけた罪人です……。そのような者が王宮に留まることなど、許されるはずがありません。お心遣いは大変ありがたいですが……それでは、陛下の評判が――」

 言葉を選びながらも、ユリアの声は次第に弱くなっていった。

「誰が何と言おうとも、お前を罪に問うことはない」

 エルフナルドは、即座にそう断じた。

「何度も言うが、罪を償うべきは私だ。お願いだ、ユリア。この王宮で……私の側で……療養してくれ」

 一瞬、言葉に詰まったように視線を伏せ、エルフナルドは続けた。

「私がお前に出来ることは、お前に最善の環境と、最善の医官達を付けてやる事しか出来ないのだ……」

 その表情は、国王としてではなく、一人の男としての苦悩に満ちていた。

「……」

 エルフナルドのあまりにも辛そうな顔を見て、ユリアはそれ以上、何も言えなくなった。
 しばらく沈黙した後、ユリアは小さく、しかし確かに――首を縦に振った。
 
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