敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 ユリアは、ユーハイム国で戦争に参加していた頃のことを思い出していた。
 不眠に悩まされた夜、決まって自分で調合した薬を飲み、無理やり眠っていた日々。

「……そうでしたか。……眠れない夜は、無理に一人で耐えなくてもよろしいのですよ」

 セルビアは小さく息を吐き、穏やかだが強い口調で言った。

「訓練も、あまりご無理なさらないでください。ユリア様は……頑張りすぎです。その状態で訓練を続ければ、かえってお身体を壊してしまいます。訓練は、一気に詰め込めば良いというものではありません。休息を取りながら、丁寧に積み重ねることが、何より大切なのです」

 そして、少し言いにくそうに付け加える。

「本日、陛下が長期視察からお戻りになると伺っております。……そのようなお姿をお見せすれば、陛下もきっと心配なさいます」
「……」

 ユリアは黙って、セルビアの言葉を受け止めていた。

「も、申し訳ありません……出過ぎたことを……」
「いいえ」

 ユリアは首を振り、静かに答えた。

「貴方の言う通りよ。……少し、焦りすぎていたみたい。ありがとう」

 ――そうだ。
 皆が助けてくれているのに、私は一人で先へ行こうとしていた。

 セルビアだけでなく、アリシアも、クリックも、皆が体調を気遣ってくれている。
 少し……立ち止まる勇気も必要なのかもしれない。

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