敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
第9章 近くて遠い人

101 静かな眠り

 エルフナルドが部屋を出て行ってしばらくしてから、ユリアはゆっくりと目を覚ました。
 まぶたを開いた瞬間、いつものような重苦しさや息苦しさがないことに気付き、ユリアは小さく瞬きをする。

 ――今日は……何だか……。久しぶりに……ちゃんと眠れた気がするわ……。

 夢を見ていた気はする。
 けれど、あの悪夢に引きずり込まれることもなく、途中で何度も目を覚ますこともなかった。
 胸の奥に残るのは、不思議なほどの静けさだった。
 ユリアは天井を見つめながら、ゆっくりと息を吐いた。

コンコンッ

 部屋の扉がノックされ、続いて静かに扉が開く。
 入ってきたのはアリシアだった。

「おはようございます。ユリア様。……今日は、少し顔色が良いようですね。眠れましたか?」

 アリシアはユリアの表情を一目見ると、ほっとしたように微笑んだ。

「ええ。不思議ね……。今日はしっかり眠れた気がするの。どうしてかしら……」
「それは良かったです」

 アリシアは心から安堵したように、胸に手を当てた。

「ユリア様、では今日のご予定はいかがなさいますか?」
「そうね……。今日は、薬事室で薬を煎じてみようと思っているの」
「分かりました。では、朝食が終わりましたら、一緒に参りましょう」

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