敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 朝食を終えた後、ユリアはアリシアに付き添われ、薬事室へと向かった。
 途中で何度も休憩を挟みながらではあったが、その日はほとんどの時間を薬事室で過ごした。
 震える手で薬草を選び、火加減に気を配りながら、少しずつ煎じていく。
 細かな作業は思うようにいかず、指先に力が入らないもどかしさに、何度も息を詰めた。

 ――それでも……何もしないよりは、ずっといい。

 集中している間だけは、余計なことを考えずにいられた。
 それだけで、心が少し軽くなる気がした。

 その日の夜、ユリアの部屋をエルフナルドが訪ねてきた。

「エルフナルド様、ご公務ご苦労さまでございます」

 ユリアがそう声をかけると、エルフナルドは部屋に入るなり、少し呆れたように言った。

「ああ。……お前は今日、一日中薬事室に籠もっていたそうだな。昨日の私の話は、ちゃんと聞いていたのか?」
「も、申し訳ありません……」

 ユリアは少し肩をすくめ、困ったように続けた。

「昨日は久しぶりによく眠れたものですから……つい、調子に乗ってしまって……」
「お前は本当に……」

 エルフナルドは言いかけて、ふっと息を吐いた。

「……まあ、よく眠れたのなら、それでいい」

 そう言って、ほんのわずかにユリアに微笑みかける。

「あの……今日は、久しぶりに薬草を煎じてみたんです。まだ細かい作業は難しいですが……訓練のおかげもあってか、手は前よりずっと動くようになってきています」

 ユリアはそう言いながら、左手を少しだけ動かしてみせた。

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