敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 ――それから、二週間ほどが過ぎたある日。

 この日もユリアは、庭園へ向かうため車椅子に乗っていた。

「アリシア、今日は自分で車椅子を押して庭園に行こうと思うの。いつも押してもらっているけれど、左手もだいぶ動くようになったから……今日は自分で頑張ってみたいの」

 ちょうど部屋に入ってきたアリシアに、ユリアはそう切り出した。

「最近は顔色も良くなってきましたものね。分かりました。では私は後ろから見守らせていただきますね」
「時間がかかると思うから、後で庭園に来てくれればいいわ。アリシアも他にお仕事があるでしょう?」
「そうですか……。ではお言葉に甘えて。後ほどティーセットを持って参りますね!」

 ユリアはまだ震える手に力を込め、懸命に車椅子を漕いだ。
 
「……ふぅ……」

 ようやく庭園に辿り着くと、先に来ていたクリックがユリアに気付き、歩み寄ってくる。

「ユリア様、こんにちは。今日はお一人でいらしたのですか?」
「はい。最近よく眠れていますし、訓練も順調なんです」

 額の汗を拭いながら、ユリアは誇らしげに笑った。

「睡眠薬に頼らず眠れているのは、とても良いことでございますね」
「ええ。この調子で、薬草もどんどん煎じていこうかと」
「それでしたら……本日は、こちらなどいかがでしょうか」

 話していると、後ろからアリシアが声をかけてきた。

「クリック様、こんにちは。ユリア様、お待たせいたしました。庭園までの道のりはいかがでしたか?」
「思ったより手が疲れてしまって……時間はかかったけれど、何とか来られたわ。もう少し体力をつけないとね」

 ユリアはそう言って、両腕を軽く振ってみせる。

「まだ訓練を始めて一ヶ月半ほどです。ここまで回復されるのは驚異的ですよ。筋力や体力の回復には時間がかかりますから、焦らずゆっくりいきましょう」
「……そうね」

 ユリアは苦笑いし、ほんの少し眉をひそめた。
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