敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「あの……もしよろしければ、この庭園の薬草たちをもう一度復活させてみませんか?」
 
 思わず口をついて出た提案だった。

「私、毎日することがなくて……。よろしければ……私にやらせていただけませんか?」
 
 この素晴らしい薬草たちが、このまま失われていく――
 それだけは、どうしても耐えられなかった。

 クリックは目を見開き、思わず勢いよく首を横に振った。
 
「王妃様に、そのようなことをお願いするわけには……!」
「でも、このままでは、せっかくの薬草がすべて枯れてしまいます。今なら、まだ間に合うものもありますわ」

 一瞬の迷いの後、ユリアは意を決して続けた。

「……それに、リヒター様が大切に育ててこられたのでしょう?」

 その名を聞いた瞬間、クリックの動きが止まった。

「きっと……その方が、リヒター様もお喜びになります。そして何より、この薬草で救われる方が、たくさんいるはずです」

 長い沈黙の後、クリックは真っ直ぐにユリアを見た。

「……分かりました。どうぞ、よろしくお願いいたします」

 深々と頭を下げる。
 
 ――その瞬間、長く閉ざされていた庭園の時間が、再び動き出した気がした。
 
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