敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
103 小さな一歩
ユリアは朝から一人で庭園へ向かい、奥で作業をしていたクリックに声をかけた。
「クリック様、こんにちは」
「こんにちは、ユリア様。……今日もお一人でいらしたのですか?」
クリックは手にしていた器具を置き、ユリアの方へと向き直った。
「はい。訓練も順調です。左足も以前より力が入るようになってきましたし……そろそろ車椅子ではなく、自分の足で立って、歩く練習も始めようかと思っています」
ユリアはそう言って、両足にそっと視線を落とした。
その声には無理に明るさを作ったような響きがあった。
「それは……順調で何よりですね。ですが、焦りは禁物ですよ」
「はい」
ユリアは一度頷くと、言葉を選ぶように一瞬視線を伏せた。
「……あの。今日はクリック様に、どうしてもご相談したいことがあるのです」
ユリアの声はわずかに揺れていた。
その声の調子に、クリックはただならぬものを感じ取ったのか、表情を引き締めた。
「……ええ。何でしょうか」
ユリアは胸の前で指先を重ね、ゆっくりと、しかし逃げることなく言葉を紡いでいった。
それは自分の身体のこと、この先のこと、そして――自分が心に決めたことについてだった。
話し終えた後、庭園には風に揺れる木々の音だけが残った。
クリックはしばらく何も言わず、ユリアを見つめていた。
その瞳には、止めたい気持ちと、止める資格はないという葛藤が混ざっていた。
「……そう、ですか」
ぽつりと零れたその声は、どこか寂しげだった。
「ユリア様のお気持ちは……よく分かりました。止めることは、私には出来ません。では……その時が来たら……お声かけください」
「……ありがとうございます。クリック様」
ユリアは深く頭を下げた。
その表情には、迷いよりも覚悟が色濃く浮かんでいた。
「クリック様、こんにちは」
「こんにちは、ユリア様。……今日もお一人でいらしたのですか?」
クリックは手にしていた器具を置き、ユリアの方へと向き直った。
「はい。訓練も順調です。左足も以前より力が入るようになってきましたし……そろそろ車椅子ではなく、自分の足で立って、歩く練習も始めようかと思っています」
ユリアはそう言って、両足にそっと視線を落とした。
その声には無理に明るさを作ったような響きがあった。
「それは……順調で何よりですね。ですが、焦りは禁物ですよ」
「はい」
ユリアは一度頷くと、言葉を選ぶように一瞬視線を伏せた。
「……あの。今日はクリック様に、どうしてもご相談したいことがあるのです」
ユリアの声はわずかに揺れていた。
その声の調子に、クリックはただならぬものを感じ取ったのか、表情を引き締めた。
「……ええ。何でしょうか」
ユリアは胸の前で指先を重ね、ゆっくりと、しかし逃げることなく言葉を紡いでいった。
それは自分の身体のこと、この先のこと、そして――自分が心に決めたことについてだった。
話し終えた後、庭園には風に揺れる木々の音だけが残った。
クリックはしばらく何も言わず、ユリアを見つめていた。
その瞳には、止めたい気持ちと、止める資格はないという葛藤が混ざっていた。
「……そう、ですか」
ぽつりと零れたその声は、どこか寂しげだった。
「ユリア様のお気持ちは……よく分かりました。止めることは、私には出来ません。では……その時が来たら……お声かけください」
「……ありがとうございます。クリック様」
ユリアは深く頭を下げた。
その表情には、迷いよりも覚悟が色濃く浮かんでいた。