敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
 執務室へ戻ったエルフナルドに、書類を整理していたクリックが声をかけた。

「陛下。実は、侍女のアリシアより言伝を預かっておりまして」
「……何だ?」

 エルフナルドが筆を置き、視線を上げる。

「ユリア様は昨日より、お食事を部屋ではなくダイニングルームで取られるようにされたそうです」
「そうか……」

 クリックは一瞬言葉を選ぶように間を置き、続けた。

「それに伴い、陛下とは食事の時間を別にしてほしいとのことでした」

 その言葉に、エルフナルドの表情がわずかに曇る。

「……そうか。ユリアがそうしたいというのであれば、それで良い」

 淡々とそう答えながらも、胸の奥では別の思いが渦巻いていた。

――ユリアは、明らかに私と距離を取ろうとしている……。
 王妃でなくなったからという、ただのケジメなのか?
 それとも……私のしていることが、重荷になっているのか……。

 エルフナルドは静かに目を閉じ、思考を巡らせる。

――いっそ、ユリアが望む通りにさせてやることが、最善なのか……。

 しかし、すぐにその考えを振り払うように、心の中で呟いた。

――……それでも。
 ユリアを、自分の側から完全に離すことなど……私には、できない。
 
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