敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
次の日、ユリアはエルフナルドと共に王宮の門前に立っていた。
「この馬で行こうか」
そう言ってエルフナルドは先に馬に跨り、ユリアに手を差し出した。
ユリアは一瞬だけ躊躇いを見せたものの、その手を取り、引き上げてもらう形で馬に乗る。
揺れに身を任せながら王宮を後にし、しばらく進むと、人の気配の少ない郊外へと辿り着いた。
「そろそろ、この辺りで休憩しようか」
「はい」
湖のほとりに馬を止め、二人は並んで腰を下ろした。
水面は穏やかに光を反射し、周囲には風と鳥の声しかない。
「とても眺めのいい場所ですね」
「そうだろう? 時々、時間ができるとここへ来る。水も澄んでいるし、夏はここで水浴びをすることもある」
「……素敵ですね。私もユーハイムにいた頃、兄と一緒に川で水浴びをしたことがあります。泳ぎも、結構得意なんですよ」
そう言って、ユリアは少し懐かしむように湖を見つめた。
――とても、気持ちがいい。
そして、エルフナルド様とこんなふうに過ごせるなんて……。
この時間が、ずっと続けばいいのに……。
「水浴びまでしていたとは……。本当に、お前には驚かされるな。もう少し足が回復したら、また一緒に来よう。その時は、ぜひ泳ぐところを見せてもらおうか」
エルフナルドは冗談めかして言った。
ユリアは微笑んだが、返事はしなかった。
――今、伝えなくては。
「なあ」「あの……」
二人の声が、同時に重なった。
「あ、ごめんなさい。どうぞ、陛下から……」
「いや……お前から話すといい」
「……ありがとうございます」
ユリアは一度、小さく息を吸い込んだ。
「王宮の皆様のおかげで……私は、だいぶ一人で歩けるようになりました。それで……」
言葉が、喉で詰まる。
本当は言いたくなかった。
この時間を壊したくなかった。
それでも――決めたのだ。
「……私、王宮を出て一人で暮らしていこうと思っています」
「……なぜだ?」
エルフナルドは思わず声を強めた。
「これまで通り、王宮で暮らせばいい。お前がここを離れる理由など――」
ユリアは、静かに首を横に振った。
「この馬で行こうか」
そう言ってエルフナルドは先に馬に跨り、ユリアに手を差し出した。
ユリアは一瞬だけ躊躇いを見せたものの、その手を取り、引き上げてもらう形で馬に乗る。
揺れに身を任せながら王宮を後にし、しばらく進むと、人の気配の少ない郊外へと辿り着いた。
「そろそろ、この辺りで休憩しようか」
「はい」
湖のほとりに馬を止め、二人は並んで腰を下ろした。
水面は穏やかに光を反射し、周囲には風と鳥の声しかない。
「とても眺めのいい場所ですね」
「そうだろう? 時々、時間ができるとここへ来る。水も澄んでいるし、夏はここで水浴びをすることもある」
「……素敵ですね。私もユーハイムにいた頃、兄と一緒に川で水浴びをしたことがあります。泳ぎも、結構得意なんですよ」
そう言って、ユリアは少し懐かしむように湖を見つめた。
――とても、気持ちがいい。
そして、エルフナルド様とこんなふうに過ごせるなんて……。
この時間が、ずっと続けばいいのに……。
「水浴びまでしていたとは……。本当に、お前には驚かされるな。もう少し足が回復したら、また一緒に来よう。その時は、ぜひ泳ぐところを見せてもらおうか」
エルフナルドは冗談めかして言った。
ユリアは微笑んだが、返事はしなかった。
――今、伝えなくては。
「なあ」「あの……」
二人の声が、同時に重なった。
「あ、ごめんなさい。どうぞ、陛下から……」
「いや……お前から話すといい」
「……ありがとうございます」
ユリアは一度、小さく息を吸い込んだ。
「王宮の皆様のおかげで……私は、だいぶ一人で歩けるようになりました。それで……」
言葉が、喉で詰まる。
本当は言いたくなかった。
この時間を壊したくなかった。
それでも――決めたのだ。
「……私、王宮を出て一人で暮らしていこうと思っています」
「……なぜだ?」
エルフナルドは思わず声を強めた。
「これまで通り、王宮で暮らせばいい。お前がここを離れる理由など――」
ユリアは、静かに首を横に振った。