敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
最終章 貴方の隣に立つ理由
107 新たな生活
それから数日後、ユリアは王宮を後にした。
ユリアが王宮を出る日まで、アリシアもセルビアも何度も引き留めた。
だがユリアが首を縦に振ることは、最後までなかった。
馬車に揺られ、市場近くの医局に到着すると、入口の前でクリックが待っていた。
「ユリア様、ようこそ医局へ」
そう言って、クリックは穏やかな微笑みを浮かべる。
「今日からお世話になります」
ユリアは深く頭を下げた。
それは王宮での礼とは違う。
これから自分の力で生きて行こうと決めた者の挨拶だった。
その後、クリックに案内され、医局の中を一通り見て回った。
ユリアが働くことになる薬事室には、すでに数人の薬師が集まっており、簡単な挨拶を交わす。
皆、穏やかで、余計な詮索はしなかった。
それだけで、胸の奥に張り付いていた緊張が、少しだけほどけた気がした。
続いて案内されたのは、ユリアの住まいとなる部屋だった。
質素だが清潔で、日当たりのよい小さな部屋。
案内の途中、クリックが口を開いた。
「ユリア様のご事情は、私の方で説明させていただきました。王妃でいらしたことは、市民には知られていないと思いますが……万が一のこともありますので、薬師の皆には伝えてあります。勝手な判断で、申し訳ありません」
「いえ……。お気遣いありがとうございます。かえってご迷惑をおかけしてしまって……」
「いえいえ。今日はいろいろとお疲れでしょう。今日はゆっくり休んでください。お仕事は明日からで結構です」
そう言って、クリックは少し間を置き、付け加えた。
「ちなみに、私の部屋は一階奥の角です。生活のことで困ったことがあれば、遠慮なく声をかけてください。力になりますから」
その言葉を残し、クリックは静かに部屋を出ていった。
ユリアは一人、部屋の中央に立ち、ゆっくりと息を吐いた。
――今日から、ここが私の生きていく場所。
ユリアが王宮を出る日まで、アリシアもセルビアも何度も引き留めた。
だがユリアが首を縦に振ることは、最後までなかった。
馬車に揺られ、市場近くの医局に到着すると、入口の前でクリックが待っていた。
「ユリア様、ようこそ医局へ」
そう言って、クリックは穏やかな微笑みを浮かべる。
「今日からお世話になります」
ユリアは深く頭を下げた。
それは王宮での礼とは違う。
これから自分の力で生きて行こうと決めた者の挨拶だった。
その後、クリックに案内され、医局の中を一通り見て回った。
ユリアが働くことになる薬事室には、すでに数人の薬師が集まっており、簡単な挨拶を交わす。
皆、穏やかで、余計な詮索はしなかった。
それだけで、胸の奥に張り付いていた緊張が、少しだけほどけた気がした。
続いて案内されたのは、ユリアの住まいとなる部屋だった。
質素だが清潔で、日当たりのよい小さな部屋。
案内の途中、クリックが口を開いた。
「ユリア様のご事情は、私の方で説明させていただきました。王妃でいらしたことは、市民には知られていないと思いますが……万が一のこともありますので、薬師の皆には伝えてあります。勝手な判断で、申し訳ありません」
「いえ……。お気遣いありがとうございます。かえってご迷惑をおかけしてしまって……」
「いえいえ。今日はいろいろとお疲れでしょう。今日はゆっくり休んでください。お仕事は明日からで結構です」
そう言って、クリックは少し間を置き、付け加えた。
「ちなみに、私の部屋は一階奥の角です。生活のことで困ったことがあれば、遠慮なく声をかけてください。力になりますから」
その言葉を残し、クリックは静かに部屋を出ていった。
ユリアは一人、部屋の中央に立ち、ゆっくりと息を吐いた。
――今日から、ここが私の生きていく場所。