敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「この国を守ろうとしている方々が、負傷して苦しんでいるのです。助けを待っている方がいるのに、行かないという選択はできません」
その瞳には、迷いはなかった。
「しかし……」
薬師とクリックは顔を見合わせ、言葉に詰まる。
「お願いします。私に行かせてください」
重ねて頭を下げるユリアの姿に、二人はついに観念したように小さく息を吐いた。
「……わかりました」
そして、クリックが一歩前に出る。
「では、私も一緒に行かせてください。ユリア様お一人では、やはり心配です」
「クリック様……ありがとうございます」
「今日はもう日が傾いています。出発は明日の朝にしましょう」
こうして二人は、翌朝、負傷者が出ている北の国へと馬で向かうことになった。
街道を抜け、次第に人影が少なくなっていく道を進みながら、クリックがふと感心したように声をかける。
「ユリア様は、やはり馬の扱いがお上手ですね。私は一応乗れはしますが、どうにも安定しなくて……」
「昔、たくさん乗っておりましたから」
ユリアは少しだけ微笑んだ。
「でも、クリック様も十分お上手ですよ。馬も落ち着いています」
「そう言っていただけると、少し安心します」
そうして言葉を交わしながら、二人は馬を進めた。
数時間後――。
ユリアとクリックは、土砂崩れの起きた北の国へと、確実に近づいていった。
日が暮れ始めた薄暗い道を進んでいると、向かい側から一頭の馬が土煙を上げて駆けてきた。
馬上の騎士は二人の姿を認めると、勢いよく手綱を引き、声を張り上げた。
「応援の方でしょうか!」
「はい。話を聞き、医局からは二人だけではありますが参りました」
クリックがそう答えると、騎士はほっとしたように息をついた。
「ありがとうございます。既に数名の医師の方が来られていますが、物資がまだ不足していたところだったんです。助かります。もうすぐ、非常用に設営した救護テントがあります。負傷者はそちらに――」
その言葉の途中で、さらにもう一頭、必死な様子で馬を走らせる騎士が現れた。
その瞳には、迷いはなかった。
「しかし……」
薬師とクリックは顔を見合わせ、言葉に詰まる。
「お願いします。私に行かせてください」
重ねて頭を下げるユリアの姿に、二人はついに観念したように小さく息を吐いた。
「……わかりました」
そして、クリックが一歩前に出る。
「では、私も一緒に行かせてください。ユリア様お一人では、やはり心配です」
「クリック様……ありがとうございます」
「今日はもう日が傾いています。出発は明日の朝にしましょう」
こうして二人は、翌朝、負傷者が出ている北の国へと馬で向かうことになった。
街道を抜け、次第に人影が少なくなっていく道を進みながら、クリックがふと感心したように声をかける。
「ユリア様は、やはり馬の扱いがお上手ですね。私は一応乗れはしますが、どうにも安定しなくて……」
「昔、たくさん乗っておりましたから」
ユリアは少しだけ微笑んだ。
「でも、クリック様も十分お上手ですよ。馬も落ち着いています」
「そう言っていただけると、少し安心します」
そうして言葉を交わしながら、二人は馬を進めた。
数時間後――。
ユリアとクリックは、土砂崩れの起きた北の国へと、確実に近づいていった。
日が暮れ始めた薄暗い道を進んでいると、向かい側から一頭の馬が土煙を上げて駆けてきた。
馬上の騎士は二人の姿を認めると、勢いよく手綱を引き、声を張り上げた。
「応援の方でしょうか!」
「はい。話を聞き、医局からは二人だけではありますが参りました」
クリックがそう答えると、騎士はほっとしたように息をついた。
「ありがとうございます。既に数名の医師の方が来られていますが、物資がまだ不足していたところだったんです。助かります。もうすぐ、非常用に設営した救護テントがあります。負傷者はそちらに――」
その言葉の途中で、さらにもう一頭、必死な様子で馬を走らせる騎士が現れた。