敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

109 洞窟の再会

「ユ、ユリア様! お待ちください! 一人では――!」

 クリックの叫びは、もう届かなかった。

 ――嘘よ。
 陛下が、そんな……。

 ユリアは何度も自分に言い聞かせる。

 ――きっと、どこかに身を隠しているだけ……。
 陛下に限って……。

 そう信じるしかなく、ユリアは必死に馬を走らせた。
 その背中を、少し離れた場所から見つめていた影――
 セルビアの姿があった。
 ユリアが馬を駆け出した瞬間、その異変に気づいたセルビアは、顔色を変えて駆け寄る。

「クリック様! 何があったのですか。ユリア様は、どちらへ向かわれたのです?」

 鋭い声に、クリックははっとして振り返った。

「セルビア殿!? な、なぜこのような場所に……」
「今はそれよりも、ユリア様です。何があったのですか」

 セルビアの真剣な表情に、クリックも状況を悟り、慌てて言葉を返した。

「陛下が……土砂崩れに巻き込まれたかもしれない、という話を聞いて……。それでユリア様が、その方角へ……。ここから五キロほど先が現場だと……」
「……なんですって」

 セルビアは歯を食いしばった。

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