敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「ユリア様……私が申し上げているのは、大変かどうかの問題ではありません。薬草をいじる王妃様など、聞いたことがありませんよ……。もし他の者に知られたら、必ず噂になりますし……」
「噂になるかしら? 庭園だって人目につきにくい場所だし、大丈夫よ!」
「ですが……っ」
言い返そうとしたアリシアは、そこで言葉を詰まらせた。
ユリアの顔は、無謀さゆえの軽さではなく、真剣さを帯びていたからだ。
「ねえ、アリシア。私、このまま何もせずに過ごすのは嫌なの。王妃だからって、何もしないで守られているだけなんて……私には向いていないわ」
――王妃という立場は、確かに大切なものだと思った。
けれど、その名前に守られて、ただ何もせずに過ごす毎日は、ユリアには少しだけ重たかった。
何も役割がないというのなら、自分で考えて、自分で動いて、少しでも役に立ちたかった。
ユリアのそのまっすぐな言葉に、アリシアは思わず視線を落とした。
しばらく黙り込んだあと、アリシアはゆっくりと息を吐いた。
「……分かりました。そこまでおっしゃるのでしたら、私もこれ以上は申し上げません」
アリシアは、本心を言えば、止めたかった。
王妃が土に触れ、薬草を育てるなど、聞いたことがなかったからだ。
どんなに善意から出た行動でも、噂になれば、ユリア様が傷つくのは目に見えている。
けれど――。
ユリアの瞳には、軽率さはなかった。
ただ守られるだけの立場に甘んじることを拒み、自分の役目を、自分の手で掴もうとする強さがあった。
その覚悟を前にして、侍女として、これ以上口出しすることはできなかった。
「本当?!」
ユリアが目を輝かせて言った。
「はい。ただし……無理はなさらないでくださいね」
「ありがとう!」
そう言って、心から嬉しそうに微笑むユリアを見て、アリシアはどこか遠い目をしながら、小さく苦笑した。
――本当に、この方は王妃らしくない。
けれど同時に、だからこそ目が離せないのだと、アリシアは自覚していた。
「噂になるかしら? 庭園だって人目につきにくい場所だし、大丈夫よ!」
「ですが……っ」
言い返そうとしたアリシアは、そこで言葉を詰まらせた。
ユリアの顔は、無謀さゆえの軽さではなく、真剣さを帯びていたからだ。
「ねえ、アリシア。私、このまま何もせずに過ごすのは嫌なの。王妃だからって、何もしないで守られているだけなんて……私には向いていないわ」
――王妃という立場は、確かに大切なものだと思った。
けれど、その名前に守られて、ただ何もせずに過ごす毎日は、ユリアには少しだけ重たかった。
何も役割がないというのなら、自分で考えて、自分で動いて、少しでも役に立ちたかった。
ユリアのそのまっすぐな言葉に、アリシアは思わず視線を落とした。
しばらく黙り込んだあと、アリシアはゆっくりと息を吐いた。
「……分かりました。そこまでおっしゃるのでしたら、私もこれ以上は申し上げません」
アリシアは、本心を言えば、止めたかった。
王妃が土に触れ、薬草を育てるなど、聞いたことがなかったからだ。
どんなに善意から出た行動でも、噂になれば、ユリア様が傷つくのは目に見えている。
けれど――。
ユリアの瞳には、軽率さはなかった。
ただ守られるだけの立場に甘んじることを拒み、自分の役目を、自分の手で掴もうとする強さがあった。
その覚悟を前にして、侍女として、これ以上口出しすることはできなかった。
「本当?!」
ユリアが目を輝かせて言った。
「はい。ただし……無理はなさらないでくださいね」
「ありがとう!」
そう言って、心から嬉しそうに微笑むユリアを見て、アリシアはどこか遠い目をしながら、小さく苦笑した。
――本当に、この方は王妃らしくない。
けれど同時に、だからこそ目が離せないのだと、アリシアは自覚していた。