敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「ごめんなさい……」

 望んではいけないと分かっているからこそ、謝るしかなかった。
 次の瞬間、掴まれていた手が強く引かれ、ユリアは再びエルフナルドの胸に抱き寄せられる。

「謝る必要などない」

 低く、しかし確かな声。

「私も、お前にそばにいてほしい」

 一度、言葉を切り。

「夜、お前を抱きしめて眠れないのは……想像以上に辛かった」

 静かに、しかしはっきりと告げる。

「私は、お前を愛している」

 その言葉に、ユリアの堪えていた涙が一気に溢れた。
 胸の奥で、ずっと否定し続けてきた想いが、肯定された気がした。

「お前は、価値がないと繰り返していたな。王妃でいる資格がないと……」

 エルフナルドは、ユリアの髪に顔を埋めながら続ける。

「お前がそれで苦しむのなら、私のそばを離れる選択も尊重しようと思った。私の気持ちなど、重荷にしかならぬと……」

 だが、と小さく息を吐く。

「それでも、やはり私はお前に側にいてほしい」

 ユリアは、まっすぐにその顔を見つめた。

 ――頷いてしまいたい。
 けれど、まだ怖い。

「……本当に頑固だな、お前は」

 苦笑混じりに、しかし優しく。

「ならば、理由をやろう。私のそばにいる“価値”を」

 ユリアの目を、真正面から捉える。

「もし、私に再び危険が迫った時――
 その時は、お前が私を守れ。お前のその強さで」

 それは命令ではなく、居場所を与えるための提案だった。

「どうだ? 私のそばで、共に生きてくれるか」

 ユリアは、涙に濡れたまま、はっきりと頷いた。

「はい。貴方のおそばに、いさせてください」

 震えながらも、確かな声で。

「貴方が傷つくその時は、私が必ず――
 お守りします」

 二人はきつく抱きしめ合った。
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