敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
111 影に立つ騎士
セルビアは、ユリアが王宮を出てから、常に一定の距離を保って彼女を見守っていた。
それが誰の命によるものかを、今さら言葉にする必要はなかった。
あの日、陛下がどんな表情でそれを頼んだか、それだけで、すべてを察するには十分だった。
王宮を離れてからのユリアの生活は、セルビアの目には落ち着いたものに映っていた。
一人での暮らしにもすぐに順応し、医局で働く薬師たちとも問題なく関係を築いている。
表情も柔らぎ、日々は充実しているように見えた。
それでも時折、笑っていてもどこか寂しさを含んだ眼差しを見せることがあった。
それでもセルビアにできるのは、陰から見守ることだけだった。
それがユリア自身の選んだ道である以上、口を挟む資格はない。
そう、何度も自分に言い聞かせながら。
そんな折、アルジール国の騎士団が土砂崩れに巻き込まれたという知らせが入った。
救援へ向かうと、馬を走らせるユリアの姿を見たとき、
セルビアは小さく息を吐いた。
――このお方は、本当に……。
誰かのためとなれば、迷いなく動く――
感心とも、呆れともつかぬ想いを胸に、セルビアは一定の距離を保ちながら、ユリアとクリックの後を追った。
やがて騎士団員が二人に近づき、何かを告げた瞬間――
ユリアは、はっとしたように表情を変え、一人馬を走らせて駆け出した。
――何が起きた?
なぜ、ユリア様が……?
胸騒ぎを覚えたセルビアは、陰から様子を見ていられず、思わず駆け寄った。
「クリック様。何があったのですか。ユリア様は、どちらへ向かわれたのです?」
鋭い声に、クリックが驚いて振り返った。
「セルビア殿!? な、なぜこのような場所に……」
「今はそれよりも、ユリア様です。何があったのですか」
その真剣な眼差しに、クリックも状況を察したのだろう。
慌てて、言葉を絞り出す。
「陛下が……土砂崩れに巻き込まれたかもしれないと……。それを聞いて、ユリア様が、その方角へ……。ここから五キロほど先が現場だと……」
「……なんですって」
セルビアは、思わず歯を食いしばった。
「まったく……ユリア様は……本当に無茶をなさる」
低く呟いた後、迷いなく決断する。
それが誰の命によるものかを、今さら言葉にする必要はなかった。
あの日、陛下がどんな表情でそれを頼んだか、それだけで、すべてを察するには十分だった。
王宮を離れてからのユリアの生活は、セルビアの目には落ち着いたものに映っていた。
一人での暮らしにもすぐに順応し、医局で働く薬師たちとも問題なく関係を築いている。
表情も柔らぎ、日々は充実しているように見えた。
それでも時折、笑っていてもどこか寂しさを含んだ眼差しを見せることがあった。
それでもセルビアにできるのは、陰から見守ることだけだった。
それがユリア自身の選んだ道である以上、口を挟む資格はない。
そう、何度も自分に言い聞かせながら。
そんな折、アルジール国の騎士団が土砂崩れに巻き込まれたという知らせが入った。
救援へ向かうと、馬を走らせるユリアの姿を見たとき、
セルビアは小さく息を吐いた。
――このお方は、本当に……。
誰かのためとなれば、迷いなく動く――
感心とも、呆れともつかぬ想いを胸に、セルビアは一定の距離を保ちながら、ユリアとクリックの後を追った。
やがて騎士団員が二人に近づき、何かを告げた瞬間――
ユリアは、はっとしたように表情を変え、一人馬を走らせて駆け出した。
――何が起きた?
なぜ、ユリア様が……?
胸騒ぎを覚えたセルビアは、陰から様子を見ていられず、思わず駆け寄った。
「クリック様。何があったのですか。ユリア様は、どちらへ向かわれたのです?」
鋭い声に、クリックが驚いて振り返った。
「セルビア殿!? な、なぜこのような場所に……」
「今はそれよりも、ユリア様です。何があったのですか」
その真剣な眼差しに、クリックも状況を察したのだろう。
慌てて、言葉を絞り出す。
「陛下が……土砂崩れに巻き込まれたかもしれないと……。それを聞いて、ユリア様が、その方角へ……。ここから五キロほど先が現場だと……」
「……なんですって」
セルビアは、思わず歯を食いしばった。
「まったく……ユリア様は……本当に無茶をなさる」
低く呟いた後、迷いなく決断する。